大判例

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福岡高等裁判所 昭和27年(う)640号・昭27年(う)641号 判決

地方自治法第十四条第四項は「行政事務に関する市町村の条例が前項の規定による都道府県の条例に違反するときは当該市町村の条例は無効とする」旨規定している。然らば、いかなる場合に市町村(以下単に市と略称する)の条例が都道府県(以下単に県と略称する)の条例に違反するかにつき考えると、(一)県条例が特定行政事務につき条例の制定を禁止し、若しくは県条例の規定に反する条例を制定することを禁止する場合、(二)県条例が一定の制限乃至は条件を設けているにかかわらず市条例が該制限乃至は条件を排除した規定を制定した場合、(三)市条例の規定が某県例の精神に反する場合、以上の場合にはじめて市条例が県条例に違反するものというべく、しかして市条例の規定がいかなる場合に県条例の規定の精神に反するかについては県、市両者の条例の制定の趣旨その規定の内容から個々具体的に判断するの外はない。今本件につき昭和二十六年七月十六日から施行された小倉風紀取締条例(以下小倉市条例と略称する)と昭和二十七年一月十日から施行された福岡県風紀取締条例(第六条は昭和二十七年七月十日から施行、以下県条例と略称する)を彼此検討すると両条例はいずれも売春の取締を目的として規定されていることが明かであると共に県条例には売春をした者又はその相手方となつた者に対する規定がないのに、市条例第三条は「売春した者又はその相手方となつた者は五千円以下の罰金若しくは拘留に処する。常習として売春した者は六月以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する」旨規定しているのであるが県条例においては、(一)売春行為自体を市条例を以て規定することを禁止していない。又(二)売春行為自体に関する諸行為を取締ることにより善良の風俗を維持し、社会秩序の健全な発達を図ることを目的とする」旨規定しているのみならず、同条例の各規定に徴すると、前掲小倉市条例第三条の規定が福岡県条例の立法精神に反する点は毫も認めることはできない。由是観之小倉市条例第三条の規定は福岡県条例に違反するものということのできないことが明かである。尤も県条例が特定の行政事務に関し何等の規定をしない場合市条例において該行政事務に関し条例を制定をすることは、即ち県条例に違反するものではないかとの疑義がないではないので考えるに元来市と県とは普通公共団体として法上対等の地位を認められ、その権能に上級下級の関係はないが市は住民に直結する基礎的公共団体であり、又県は該市を包含する上層的地方団体たるの立場上その権能につき重複の存することが免れないため県は市の行政事務に関し条例で必要な規定を設けることができるし、又行政事務に関する市の条例が県の条例に違反する場合その前者が無効とされる場合があるに過ぎないのであるから、県が特定の行政事務について、県一般にその取締を禁止する条例を制定しない限り、これを県がその行政事務として取上げていない場合は勿論、取上げている場合であつてもその規定の不備のため確実にその行政目的を達成することができない場合これを補完するため、その規制範囲の外にある部分について、これを市の事務とし、市がその特殊事情に即した自治立法権の発動をなし得るものと解するのが相当である。しかして、本件は県条例が売春行為自体に対し取締を禁止する旨の明文の規定を設けない場合であるから以上説示の見地によると、本件は県がその事務としてこれを取上げていない場合か又は取上げているとしても規定不備のため確実にその取締目的を達成しない場合に該当することが明かであるから市はその独自の立場において、県条例の規制範囲外である売春行為そのものの取締を自己の事務として取上げ必要に応じこれに関する条例を制定し得るものと解さなければならない。然らば昭和二十六年七月十六日施行の小倉市風紀取締条例第三条の規定は昭和二十七年一月十日から施行された福岡県風紀取締条例の存するにかかわらず現にその効力を有するものといわなければならない。

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